物流業務の効率化やサービス品質の向上を目指す企業にとって、3PL（サードパーティ・ロジスティクス）は欠かせない仕組みのひとつです。
その中でも、アセット型3PLは、自社保有の倉庫や車両を活用し、安定した物流サービスを提供する方法として広く利用されています。
一方で、ノンアセット型3PLとの違いや、それぞれの特性を理解することは、最適な物流戦略を構築する上で重要です。
本記事では、アセット型3PLの特徴を解説するとともに、選ぶ際に考慮すべきポイントを具体的に紹介します。
3PLの基本とアセット型の特徴
3PLとは
3PL（サードパーティ・ロジスティクス）は、企業が物流業務を専門業者に委託する仕組みです。
1990年代に欧米で広がり、日本では1990年代後半から普及が進みました。
3PLを活用することで、企業は物流業務の効率化を図りつつ、より重要な業務に集中できるようになります。
3PL業者の業務は、輸送や倉庫管理にとどまらず、物流ネットワークの設計や在庫管理の最適化、さらには物流データの分析や予測支援まで多岐にわたります。
例えば、輸送スケジュールを最適化することで配送コストを削減し、在庫状況をリアルタイムで把握できるシステムを導入することで、在庫切れや過剰在庫を防ぐといった取り組みが行われています。
こうした効率化は、コスト削減だけでなく、顧客への安定的なサービス提供にも役立つでしょう。
国土交通省も3PLを推進しており、物流効率化が環境負荷の低減や地域経済の活性化につながるとしています。
さらに、3PLの活用により、物流全体のデータが一元管理されることで、業務の状況がリアルタイムで可視化されます。
この仕組みを通じて、例えば配送遅延や在庫不足といった課題が早期に発見され、対応策を迅速に検討することが可能です。
これにより、企業は的確な意思決定を行い、トラブルを最小限に抑えることができます。
複雑化する物流環境の中でも、3PLは柔軟な運営体制を構築するうえで重要な役割を果たします。
需要変動に応じた輸送計画の調整や、季節需要に対応した倉庫の拡張運用などが可能です。
このように、3PLは効率化だけでなく、変化に対応できる運営基盤を提供し、物流管理における有力な選択肢として注目されています。
アセット型3PLとは
アセット型3PLは、物流業者が自社で保有する資産（倉庫や車両など）を活用してサービスを提供する形態です。
アセット型では、輸送や保管に必要なリソースを物流業者が自ら管理するため、安定性が高い物流サービスを提供できます。
一方で、資産に依存するため、柔軟な対応が難しい場面があるのが懸念点です。
例えば、特定地域に物流拠点がない場合や新しいルート構築が必要な際、迅速な対応が求められる場合には課題が生じることがあります。
それでも、アセット型3PLは安定性と品質が求められる食品や医薬品業界など、多くの分野で採用されています。
例えば、食品メーカーが大型ショッピングモールに向けて冷蔵商品を定期配送する際、温度管理された専用車両を用いることで、配送時間の厳守と品質保持を実現しています。
また、医薬品業界では専用倉庫を活用して、薬剤の温度や湿度を厳密に管理するシステムが導入されています。
これにより、製品劣化のリスクを抑えるとともに、医療機関への迅速な供給が可能です。
この形態は、ノウハウの蓄積や設備の管理を通じて、信頼性の高いサービスを実現する手段としても活用されています。
選択肢として検討する際には、資産活用のメリットと柔軟性の制約を比較し、自社のニーズに合った活用方法を見極めることが重要です。
アセット型3PLとノンアセット型3PLの比較
ノンアセット型3PLは、物流業者が自社で倉庫や車両などの物流資産を保有せず、外部の協力企業と連携してサービスを提供するモデルです。
この形式では、自社資産を持たない分、外部リソースを柔軟に活用できます。
これにより、多様な顧客ニーズに対応できる一方、サービスの安定性が外部パートナーの状況に左右される点が課題です。
以下は、アセット型とノンアセット型の主な特徴です。
| 項目 | アセット型3PL | ノンアセット型3PL |
|---|---|---|
| 資産の保有 | 自社で倉庫や車両などの資産を保有 | 資産を保有せず外部パートナーを活用 |
| 柔軟性 | 自社資産の範囲内でサービスを提供 | 外部リソースを活用することで柔軟な対応が可能 |
| サービスの安定性 | 自社資産を活用しているため安定した提供が可能 | 外部パートナーの影響を受けることがある |
| コスト管理 | 固定費が発生するためコスト削減には限界がある | 変動費中心のコスト構造で効率的な運営が可能 |
| 技術導入のスピード | 自社資産の規模や更新計画により導入スピードが異なる | パートナー企業の技術を活用して迅速に対応できる |
アセット型3PLは、自社資産を基盤に安定したサービスを提供できる点が特徴ですが、自社資産を使用する分、柔軟な対応には限界があります。
一方で、特定の分野ではその強みを活かした高品質なサービスを提供できます。
ノンアセット型3PLは、柔軟性を活かして多様なニーズに応じることができますが、外部パートナーへの依存が課題となる場合があります。
物流戦略を立案する際には、これらの特性を理解し、それぞれの特徴を活かして選択しましょう。
アセット型3PLのメリットとデメリット
メリット
安定性の高さ
アセット型3PLは、物流業者が自社で保有する倉庫や車両を活用し、外部の影響を受けにくい物流サービスを提供できるのがメリットです。
例えば、エネルギー業界では、安全に配慮した輸送が欠かせません。
ガスタンクや石油ドラム缶の輸送時に自社保有の専用トレーラーを使用することで、安全性を最優先した輸送体制を整備できます。
ただし、対応範囲は自社資産の範囲内に限定されるため、対応可能なトラブルには限界があります。
それでも、輸送スケジュールの調整や緊急対応が迅速に行える点は、荷主企業にとって信頼性の高い物流運営を支える要素です。
特に、食品や医薬品など品質管理が求められる業界で、この安定性が評価されています。
品質を維持しやすいサービス
アセット型3PLは、自社の設備や専門スタッフを活用しているため、品質基準の高い物流サービスが特徴です。
例えば、医薬品や精密機器といった品質が重要な製品の輸送では、温度管理倉庫や専用車両を使うことで、品質を維持しながら配送が可能です。
また、スタッフへの研修や設備の更新を定期的に行うことで、最新技術やノウハウを導入し、業務の効率化と安全性の向上を図っています。
このような取り組みにより、他の物流サービスとの差別化が図られ、品質重視の企業に選ばれています。
カスタマイズ対応力
アセット型3PLは、顧客ごとの特定ニーズに合わせて柔軟なサービス設計が可能です。
例えば、アパレル業界では春夏や秋冬のシーズンごとに輸送が集中します。
その際に、大規模倉庫を活用して一時的に在庫を保管し、全国の店舗に効率的に配送する仕組みを設計しやすいのがアセット型です。
また、物流業者が保有している倉庫内で検品やタグ付け作業を行うことで、店舗側の負担を軽減すると同時に、出荷ミスを削減する仕組みも特徴のひとつです。
この柔軟性により、荷主の物流課題を解決する適切なサービスを受けられるのが特徴です。
デメリット
高額な導入コスト
アセット型3PLを利用する場合、物流業者が保有する資産（倉庫や車両など）を活用するためのコストが発生します。
例えば、新たな物流拠点でのサービスを依頼する場合、利用料金が倉庫の設備や専用車両の維持費に反映されることがあります。
このため、特に中小規模の荷主企業では、運用開始時のコスト負担が大きく感じられるかもしれません。
しかし、長期的な視点で物流効率を改善できれば、全体のコスト削減につながる可能性があるため、費用対効果を試算してみましょう。
サービス範囲の制約
アセット型3PLでは、物流業者の保有する資産が提供可能なサービス範囲に影響を与える場合があります。
例えば、物流業者の拠点が特定の地域に集中している場合、対応可能な配送エリアが限定されることがあるでしょう。
また、新しい地域での物流展開を検討している場合、拠点の設置状況によっては柔軟な対応が難しいケースもあるでしょう。
このため、導入前に、サービス提供エリアや対応力を具体的に確認することが重要です。
突発的な需要への対応課題
アセット型3PLでは、物流業者が保有する資産が急な需要増加に対応しきれないケースがあります。
例えば、大規模なセールや季節的な繁忙期において、一時的に必要な倉庫スペースや車両が不足することがあるでしょう。
このような場合、対応のための追加費用やサービス調整が必要になる可能性があります。
この課題を軽減するには、物流業者と事前に需要予測やリソース計画について綿密に打ち合わせを行い、繁忙期に向けた準備を進めることが求められます。
アセット型3PLを選ぶ際のポイント
自社ニーズとの適合性
アセット型3PLを選ぶ際には、物流業務の内容や製品特性に対応できるサービスかどうかを確認することが重要です。
例えば、温度管理が必要な食品や医薬品を扱う場合、冷蔵・冷凍設備の性能が自社の要件に適合しているかを具体的に確認する必要があります。
また、配送エリアが事業規模や拡大計画に対応しているかも評価すべき点です。
危険物を取り扱う場合には、法規制に適合した専用設備や輸送車両が提供されることを確認してください。
さらに、出荷量や特殊商品の取り扱いなど、具体的な要件が満たされているかどうかを事前に比較検討することが大切です。
自社のニーズとサービス内容が一致していれば、効率的な運営や物流品質の向上が期待できます。
コストと効果のバランス
アセット型3PLの導入では、初期費用や運用コストが適切な価値をもたらすかを慎重に検討する必要があります。
例えば、商品の配送遅延率がどれだけ減少するかや、総コストが年間でどれくらい削減されるかを数値化することで、導入後の効果を具体的に把握できます。
また、初期投資だけでなく、長期的な運用コストや予想される削減効果の評価も欠かせません。
事業拡大や市場の変化に対応するための柔軟性を持つサービスであるかどうかも重要な選定基準のひとつです。
コスト負担を最小限に抑えつつ、物流サービスの品質や効率を高める選択肢を検討することが求められます。
こうしたポイントを総合的に判断することで、長期的な効果を発揮するパートナーを選ぶことが可能です。
事業者選定のポイント
アセット型3PL事業者を選ぶ際には、提供されるサービスの質や実績を総合的に評価しましょう。
例えば、事業者の実績を確認する際には、同規模や同業界での成功事例があるかどうかを調べると適合性が明確になります。
また、カスタマイズ対応が自社の物流ニーズに合致しているかを確認してください。
さらに、緊急時の対応力を見極めるために、過去の具体的なトラブル事例やその解決策について事業者に尋ねることも有効です。
事業者が保有する設備や技術が更新されているか、継続的な改善が行われているかも評価すべきポイントです。
長期的な取引を見据えて、経営の安定性や問題解決のスピードも確認することで、信頼できるパートナーを見つけることができます。
運送の依頼は中島運送まで
中島運送は、お客様の物流ニーズに対応する運送サービスを提供しています。
食品や日用品、精密機器など、幅広い業界での実績を持つ当社は、輸送から付帯業務まで一貫したサービスを展開しています。
自社保有の車両と倉庫を活用し、定期便や緊急配送など、さまざまなご要望に迅速かつ柔軟に対応可能です。
また、輸送中の温度管理や荷扱いの丁寧さに重点を置き、製品の品質を保ちながら確実にお届けします。
在庫管理や仕分けといった付帯業務にも対応することで、物流負担を軽減し、お客様の事業効率化をサポート。
物流サービスの改善や最適化をお考えの際は、ぜひ中島運送にご相談ください。
まとめ
アセット型3PLは、物流業務の安定性や高品質なサービスが期待できる選択肢です。
特に、温度管理が必要な食品や医薬品、法規制に対応が求められる危険物の輸送など、特定の要件を満たすサービスを必要とする業界で多く採用されています。
一方で、導入には運用コストや柔軟性の面で課題があるため、自社の物流ニーズに合った事業者を選ぶことが重要です。
例えば、対応可能な配送エリアや設備の仕様、費用対効果などを事前に確認することで、導入後の課題を最小限に抑えることができます。
また、ノンアセット型との違いを理解し、両者の特性を比較することで、自社の目標に最適な物流戦略を構築できます。
本記事を参考に、自社に合うサービスを選択しましょう。