基礎知識

物流業務の効率化やコスト削減が求められる現代、注目されているのが「物流システム」の導入です。
物流システムとは、倉庫管理・在庫管理・配送管理など、物流に関わる一連の業務をITの力で可視化・最適化する仕組みです。
業務の属人化や人為的ミスを防ぎ、全体の生産性を高める手段として、多くの企業が導入を進めています。

しかし、物流システムの種類や機能は多岐にわたるため、自社に適したシステムを選ぶのは簡単ではありません。
本記事では、物流システムの概要から導入メリット・デメリット、選定のポイントまでを丁寧に解説します。

物流システムとは?現代ビジネスにおける役割と必要性

物流システムは、企業の競争力を左右する重要な要素です。単なる運送や倉庫管理にとどまらず、生産や販売と密接に連携し、サプライチェーン全体の最適化を支えます。
近年では、ECの普及や多様な消費者ニーズに応えるため、リアルタイムな情報管理や自動化が求められるようになりました。
こうした背景から、物流システムの導入は業務の効率化、コスト削減、顧客満足度向上のために欠かせない存在となっています。

物流の6大機能

物流システムがどの領域で役立つのかを理解するために、まずは物流が持つ基本的な6つの機能を知ることが大切です。
これらの機能がスムーズに連携することで、モノの流れは成り立っています。
具体的には、以下の6つの機能で構成されています。

機能 内容
①輸送・配送 商品を目的地まで安全かつ効率的に運ぶ機能。
②保管 商品を倉庫などで適切に管理し、品質を維持する機能。
③荷役 商品の積み下ろしや倉庫への入出庫、ピッキング作業などを行う機能。
④包装 商品の価値を保護し、輸送しやすいように梱包する機能。
⑤流通加工 ラベル貼りやセット組みなど、商品に付加価値を与える作業。
⑥情報管理 在庫情報や輸送状況など、物流全体のデータを管理・活用する機能。

これらの各工程で発生する手間や課題を、物流システムが解決へと導きます。
自社のどこに改善の余地があるのかを考える上で、この6つの機能は一つの指標となるのではないでしょうか。

 【機能別】主な物流システムの種類を徹底解説

物流システムには、解決したい課題や目的に応じて、実に様々な種類があります。
自社に適したシステムを導入するためには、まずどのような種類があり、それぞれがどのような役割を担っているのかを理解することが重要です。
ここでは代表的な物流システムを機能ごとに分け、それぞれの特徴を分かりやすく解説します。

倉庫業務を効率化する「倉庫管理システム(WMS)」

倉庫管理システム(WMS)は、倉庫内の業務フロー全体を一元管理し、効率化と正確性の向上を図るための、倉庫の司令塔と言えるシステムです。
このシステムを導入することで、商品のロケーションが明確になり、探す手間が省けるほか、人的なミスを大幅に削減することが可能です。
リアルタイムで正確な在庫状況を把握できるため、欠品や過剰在庫を防ぎ、顧客への迅速な対応と物流品質の向上に大きく貢献するでしょう。

輸配送を最適化する「輸配送管理システム(TMS)」

輸配送管理システム(TMS)は、商品の輸配送における配車計画、ルート選定、進捗管理、コスト把握などを支援するシステムです。
ドライバーの稼働状況や車両の位置情報を活用し、積載効率の向上や燃料費の削減を実現します。
繁忙期の急な配送依頼にも柔軟に対応できる点も強みです。
配送の遅延リスクを減らし、顧客への納期遵守率を高めることで、サービスレベルの底上げにも繋がります。

在庫を正確に把握する「在庫管理システム」

在庫管理システムは、商品や資材の在庫数・在庫場所・在庫価値をリアルタイムに把握するためのツールです。
過剰在庫や欠品を防ぎ、需要変動に対する迅速な対応を可能にします。
倉庫管理システム(WMS)と連携することで、庫内の状況と販売データを連動させ、在庫回転率の改善や発注の最適化が図れます。
また、複数拠点の在庫を一元管理できる機能もあり、広域物流を行う企業には特に有効です。

その他の主要な物流システム(運行管理・ピッキングシステムなど)

これまで紹介したシステムの他にも、物流業務を支えるさまざまなシステムがあります。
例えば「運行管理システム」は、ドライバーの労働時間や車両の動態を管理し、日報作成の自動化や安全運転の徹底をサポートするものです。
コンプライアンス遵守の観点からも導入が進んでいます。
また、倉庫内作業に特化した「ピッキングシステム」は、デジタル表示器や音声で作業者を誘導することで、ピッキングのスピードアップとミスの削減に繋がります。
自社の課題が明確な場合は、こうした専門的なシステムを検討することも有効な手段となるでしょう。

物流システム導入がもたらすメリット

物流システムの導入は、日々の業務を楽にするだけでなく、企業全体の生産性や収益性に大きな影響を与える戦略的な投資です。
人手不足や物流コストの上昇、顧客ニーズの多様化といった現代の物流課題に対し、システムを活用することで、効率的かつ高品質な物流体制を実現できます。
ここでは、物流システム導入によって得られる主な4つのメリットをご紹介します。

メリット1:業務効率化によるコスト削減

物流システム導入におけるメリットは、業務効率化を通じたコスト削減です。
これまで手作業で行っていた業務を自動化・最適化することで、作業時間や人件費、輸送費といった様々な費用を削減することに繋がります。
例えば、輸配送管理システム(TMS)は効率的な配送ルートを自動で算出するため、走行距離が短縮され、燃料費の抑制が期待できます。
また、倉庫管理システム(WMS)によって作業動線が最適化されれば、残業時間の削減にも貢献するでしょう。

メリット2:人為的ミスの削減とサービス品質の向上

物流業務において、伝票の記入ミスや在庫確認の漏れなど、人為的ミスはトラブルの大きな原因となります。
物流システムはこうしたミスを自動化によって大幅に減少させることができます。
例えば、バーコードやRFIDによる入出庫管理、配車の自動ルート設定などにより、正確な業務遂行が可能になります。
その結果、納品ミスや誤出荷といったトラブルが減少し、取引先や顧客との信頼関係を高める上で非常に重要な要素ではないでしょうか。

メリット3:物流業務の「見える化」で的確な経営判断を支援

物流システムを活用することで、入出庫数、在庫残、配送状況など、物流業務に関わるデータがリアルタイムで可視化されます。
見える化することで、経営層や現場管理者は状況を即時に把握でき、迅速な意思決定が可能になります。
また、月次・週次のレポート作成も自動化されるため、分析作業にかかる手間が軽減されるとともに、改善策の検討もスムーズに行えるようになります。
物流の可視化は、企業全体の生産性向上に繋がります。

メリット4:顧客満足度の向上

納品遅延や誤配送は、顧客からの信頼を損なう要因となります。
物流システムの導入により、納品予定の正確な通知や荷物の追跡、適切な梱包対応などが可能となり、顧客の不安や不満を軽減します。
特にEC事業では、「いつ届くか分かる」「遅れない」という安心感が、リピーター獲得や口コミ評価の向上に繋がります。
丁寧で確実な物流サービスは、顧客との信頼関係を深め、リピート購入を促す強力な動機付けとなるでしょう。

システム導入前に知っておくべきデメリット

物流システムは多くのメリットをもたらす一方で、導入には一定のコストや運用上の課題が伴います。
特に初期費用や社内体制の整備に対しては、事前に十分な検討が必要です。
導入後に「想定外のコストがかかった」「現場が対応できなかった」といったトラブルを避けるためにも、注意すべきポイントを把握しておきましょう。

デメリット1:導入・運用コストの発生

物流システムの導入には、初期導入時だけでなく、継続的に発生するランニングコストも考慮する必要があります。
特に、自社に合わせたカスタマイズや、既存システムとの連携を行う場合は、その分の負担も大きくなります。
また、クラウド型とオンプレミス型でコスト構造や支払い形態が異なるため、選定段階での検討が必要です。
※クラウド型とオンプレミス型については【失敗しない】自社に適したシステムの選び方と比較ポイント ポイント2:提供形態で選ぶ(クラウド型 vs オンプレミス型)で紹介しています。

費用項目 内容 備考
初期導入費用 ソフトウェア購入、構築、設定など 社内システム部門との連携が重要
カスタマイズ費用 自社業務に合わせた機能追加や改修 導入前に業務要件を明確化しておくこと
月額利用料 クラウド型サービスにおける利用ライセンス 契約形態や利用人数により変動
保守・運用費 システムの維持管理、アップデート対応 ベンダーのサポート範囲を事前に確認
教育・研修費 操作方法や業務フロー変更への対応 定着支援のためのマニュアル整備も必要

導入の検討時には、費用項目ごとの内容を把握し、自社のリソースや予算に応じたプランを立てることが、スムーズな運用開始に繋がります。

デメリット2:現場への教育と定着までの時間

新しいシステムの導入において、見過ごされがちですが非常に重要なのが、現場で働くスタッフへの教育と、システムが業務に定着するまでにかかる時間です。
どれほど優れたシステムを導入しても、実際に使う人が操作できなければ意味がありません。
これまで慣れ親しんだやり方からの変更には、一時的に現場の混乱や心理的な抵抗を招くこともあります。
そのため、導入前に「なぜシステムが必要なのか」という目的やメリットを丁寧に共有し、現場の理解と協力を得ることが重要です。
また、分かりやすいマニュアルの整備や研修会を開くなど、スタッフが安心して新しい業務に移行できるようなサポート体制を整える必要もあるでしょう。

【失敗しない】自社に適したシステムの選び方と比較ポイント

物流システムは、業務改善に大きな効果をもたらす一方で、選定を誤ると費用対効果を得られず失敗に終わることもあります。
導入時には、自社の業務課題や運用体制に適したシステムを見極めることが重要です。ここでは、失敗を防ぐための3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:解決したい課題を明確にする

最初に取り組むべきは、「何を改善したいのか」を明確にすることです。
物流業務にはさまざまな課題が存在しますが、すべてを一度に解決しようとするのではなく、優先順位をつけて対応することが重要なポイントになります。
例えば、

・「誤出荷や在庫差異が多い」→WMS(倉庫管理システム)の導入を検討
・「配車業務が属人化している」→TMS(輸配送管理システム) が有効
・「在庫の可視化や拠点ごとの状況把握ができない」→在庫管理システムを導入

このように、課題に対してどのシステムが必要かを絞り込むことで、導入効果が期待できるでしょう。

ポイント2:提供形態で選ぶ(クラウド型 vs オンプレミス型)

物流システムには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つの提供形態があります。
これらは導入コストや運用方法、カスタマイズ性が大きく異なるため、自社のIT環境や予算に合わせて、どちらが適しているかを見極める必要があります。

 

比較項目 クラウド型(SaaS) オンプレミス型
導入コスト 比較的安価。初期費用が無料の場合も。 高額になりやすい(サーバー購入費など)
導入スピード 早く、契約後すぐに利用開始できることが多い。 時間がかかる(システムの設計・構築期間)
カスタマイズ性 標準機能が中心で、自由度は低い傾向。 自社の業務に合わせて自由に設計可能。
メンテナンス システム提供会社が保守・更新を行う。 自社で保守・管理を行う必要がある。
利用場所 インターネット環境があればどこでも可能。 原則として社内ネットワーク内に限定。

 それぞれにメリット・デメリットがあるため、企業規模や社内のIT体制、予算に応じて自社に適した形式を選ぶことが大切です。

ポイント3:操作性とサポート体制を比較検討する

現場で使われるシステムだからこそ、実際に使う社員にとって「使いやすいかどうか」は重要です。
直感的に操作できるインターフェースであること、モバイル対応や多言語対応などもポイントです。
また、トラブル時や導入時のサポートが充実しているかも確認すべきです。
導入前に無料トライアルを活用して操作感を確認したり、ベンダーのサポート対応時間や内容を比較したりすることで、安心して導入できるか判断できます。

物流のことなら中島運送

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中島運送では、配送業務や倉庫業はもちろん、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)を含む総合的な物流サービスを提供しています。
長年にわたり培ってきた現場対応力と柔軟な運用体制を活かし、企業ごとの業種や商材、物流課題に応じたソリューションを提案いたします。
保管・流通加工・輸配送の各工程をワンストップで対応し、物流全体の見える化と効率化を支援いたします。

「物流をアウトソースしたい」「倉庫の見直しを検討している」「配送業務の効率化を進めたい」といったご相談がありましたら、ぜひ一度中島運送までお気軽にお問い合わせください。

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まとめ

物流システムは単なる業務ツールではなく、企業の競争力を高めるための戦略的な武器です。
業務の効率化やコスト削減、人的ミスの防止、顧客満足度の向上など、導入によって得られるメリットは多岐にわたります。
一方で、初期コストや運用の難しさといったデメリットも存在するため、事前に自社の課題や目的を明確にした上で、自社に適したシステムを選定することが重要です。

クラウド型かオンプレミス型か、カスタマイズ性や操作性、サポート体制など、多角的な視点から比較検討を行いましょう。
自社に適した物流システムの導入は、企業成長の重要なポイントになります。
迷ったときは、現場に精通したパートナーと連携しながら、確実な第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。